東京家庭裁判所 平成11年(少)2110号・平11年(少)2884号・平11年(少)501440号
主文
少年を初等少年院に送致する。
理由
(非行事実)
少年は、
第1 A及び触法少年Bと共謀の上、平成11年2月28日午後1時30分ころ、東京都大田区○□×丁目××番×号○○荘前路上において、C所有の原動機付自転車1台(時価2万円相当)を窃取し、
第2 同年7月18日午前7時ころ、同区○○□×丁目××番×号D方前路上において、D所有の自転車1台(時価5000円相当)を窃取し、
第3 公安委員会の運転免許を受けないで、同年1月28日午後10時5分ころ、同区○△×丁目×番地付近道路において、第1種原動機付自転事を運転したものである。
(適用法条)
第1につき 刑法60条、235条
第2につき 同法235条
第3につき 道路交通法118条1項1号、64条
(処遇の理由)
1 少年の第1の非行は、少年が家出中共犯者らと行動を共にしていた際、鍵のかかっていない被害車両(原動機付自転車)を発見し、共犯者らとのじゃんけんに負けた少年がこれを窃取することになり、少年が被害現場から持ち去って窃取したものであり、第2の非行は、児童自立支援施設都立誠明学園(以下「誠明学園」という。)に入所後無断外出して行動中足代わりに自転車を窃取したものであり、第3の非行は、家出中原付車(盗品)を無免許運転したものである。
2 少年は、平成11年3月25日ぐ犯保護事件で試験観察に付され、同年4月12日中間審判を受け、試験観察が続行され、同年6月10日児童自立支援施設送致決定を受け、同日誠明学園に入所した。しかし、少年は、直後の同月13日同室の2名の少年と無断外出(1回目)し、同月27日○○警察署に保護され帰園した。さらに同月30日1名の少年と無断外出(2回目)し、同年7月18日第2の非行をし、同日○○警察署に保護され、翌19日誠明学園に戻された。そして少年は、同月21日誠明学園から当裁判所に任意同行され、当裁判所は、同日事件係属中の第1の非行事実(平成11年少第2110号)により観護措置(身柄引き上げ)をとった。
3 少年の性格や行動傾向は、前件の決定書中でも指摘したように社会性の発達が年齢に比して遅れており、他律的で見通しの甘い衝動的行動をとる点が特徴的である。さらに同決定書の処遇の理由1に記載したように、少年の頻回の家出に対して少年の意識を覚醒するため保護者、学校、児童相談所などが関わり指導したほか、当裁判所は上記中間審判を含む複数回の審判等を通じて少年の改善を期待したが、在宅処遇では効果が得られないことから前件の処遇選択(児童自立支援施設送致決定)に至ったものである。しかし、少年は、同施設(誠明学園)でも自己の問題性を認識することができず処遇に不満を持ち、上記のとおり同決定の3日後に無断外出した。その動機は全く些細な理由によるものであるが、無断外出中は、一時保護所で知り合った者らと大田区○○周辺を徘徊したり野宿をするなどし、その間少年の供述によるとひったくり2回(自転車で若い女性をねらったもの、各未遂)、万引き2回の非行をしたこともうかがわれる。前記2回目の無断外出は、前記1回目の無断外出から戻り、学園で指導を受けながら、3日後に無断外出を繰り返し、不良仲間と行動をともにし、その仲間の親戚宅(茨城県)に行くなど行動範囲を広げ、この間にも少年の供述によると、少年が恐喝やスーパー等から万引きの非行をしたことをうかがうことができる。また誠明学園での少年の上記のような行動は、他生に悪影響を及ぼし、信頼関係を基礎とする同所での指導は困難を来している。
4 少年は、上記のようなこれまでの処遇について他罰的な被害感を訴えるのみで、自己の問題点に直面しようとせず、内省に乏しい。そしてその時々の指導に際し一時的には更生を誓ってもすぐこれに反する行動をとることを繰り返している。少年は規制を受けることを嫌い、規範意識が乏しく安易に逸脱すること、自己中心的で独りよがりな面があること、大人に対する強い不信感を有していることが顕著にうかがわれる。また原付車の窃盗や無免許運転も常習的にしていることがうかがわれ交通事故に至る危険性も高い。このように少年の問題性には相当根深いものがある。前記ぐ犯保護事件が当庁に係属した以降も少年の不良交遊に伴う行動範囲や非行行動が急速に抗大してきていることが認められる。このような少年を改善させるためには、もはや在宅処遇はもとより開放施設である児童自立支援施設における処遇でも困難である。少年に対しては、隔離された矯正施設の中で自己の問題性に目を向けさせ、内面の改善を図る矯正教育が必要である。
5 少年の保護者は、熱心で指導意欲は認められるが、理詰めな指導になりがちで少年の内面を育成する余裕がなく、少年を更生させるための監護力としては十分でない。気持ちのうえで少年と保護者の関係も遠くなっている。今後少年には家族との関係改善を図ることが必要である。
(なお、第1、第3の非行は、前件(平成11少第×××号、第××××号ぐ犯保護事件)の決定(児童自立支援施設送致)前の非行である。そして同決定では、ぐ犯行状の一部として少年が生活態度を悪化させた具体的例示として無免許運転やオートバイ盗を犯したことを摘示している。一般的にぐ犯事件について一事不再理効(少年法46条)が否定されるものとは解されない。ところでぐ犯事件における個々のぐ犯行状は、ぐ犯性を認定するための間接事実または要保護性に関する事実として機能するものである。そのため、その特定性や証拠資料の面(厳格性等)でぐ犯性認定に必要な限りのものとして足りるのであり、審判対象そのものとしての非行事実を認定する場合とは異なる面がある。したがってぐ犯行状の認定の結果として、そのまま審判対象そのものとして判断された非行事実の認定結果が有するのと同一の効力(一事不再理効)を有するものと解することは相当ではない。本件においても、前件ぐ犯保護事件のなかでぐ犯行状の一部として認定した無免許運転やオートバイ盗は、主として少年が、前件の調査時調査官に供述したところによるが、その際少年は、必ずしも本件第1、第3の非行事実を正確に申告したものではなく、原付車の窃盗を、第3の無免許運転に関係するもののように説明するなど曖昧な申告内容であった(審判対象としての非行事実を認定する場合にはこのような証拠資料では不十分であるが、ぐ犯行状の認定としては評されないものではないと解する。)。もとより前件のぐ犯行状は上記にとどまらず家出や保護者の監督に服しない等のぐ犯事由にもよるものである。そこで、このような経過により認められた上記ぐ犯行状の認定が、本件非行の認定に際して一事不再理効を及ぼすものではないと判断した。)
よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して、少年を初等少年院に送致することとし、主文のとおり決定する。